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2008.03.14(Fri)

fate×空の境界SS 第一話 

第一話:蒼崎

「暑は夏い」とかいう古いギャグがあったが、この状況ではそのギャグの寒さもこの火照る体をヒンヤリと包み込むことはない。むしろイライラする。
オレは終業式の長い校長の語りを聞きながら、あのヅラは一体どういう構造で頭に貼りついているんだろう、ぜひ一度解析してみたいものだ。などという至極くだらないことに脳細胞を使っていた。
暑い。暑すぎる。なんなんだ本当に。
普段なら軽く聞き流せる校長の学生時代の思いでも、今はひたすらに神経を突きまわしてくる。
爆発寸前という言葉が、頭の中で回った。
約30分にわたる拷問を無事乗り切った亡者達はぞろぞろと教室に帰っていく。
我がクラスで戦死者が4人。校長にはぜひとも状況を理解してのトークをして欲しいものだ。

「衛宮、今日は午後から暇か?」
机に突っ伏して、あまりの暑さに脳みそを蒸されていると、傍に立った一成がオレの顔を覗き込むように聞いてきた。その面持ちは少しもうしわけないような、遠慮がちなものだ。
きっと「さぁ夏休み!」というこの状況で手伝いを頼むことにためらいがあるのだろう。
「悪い一成。ちょっと今日は綾子に弓道部を覗いてくれって頼まれてて」
そんな一成の様子が感染したのか、オレもえらくもうしなさげに答えてしまった。
「そ、そうか、いやすまない。どうも衛宮に頼るくせがついてしまってな・・・」
そんなオレにさらにもうしわけないと思ったのか、一成は漁りだす。
「けど明日なら大丈夫だ。とりあえず用事だけでも聞いておくよ」
「そうか・・・すまない。実は文芸部のエアコンが・・・」
一成は少しはにかみながら用事の内容を話し出した。ここで断ってもオレはしつこく用事を聞き出そうとすることを一成は知っている。だからあえてこういう時、遠慮はしない。
そんな一成との関係をオレも気に入っていた。
「それじゃ悪いけどそろそろ行くよ。また明日な」
「いつもいつも本当にすまない。恩に着る」
「かまわないさ。人の役に立てるならな」
「衛宮のそういう所は好きだ、だがそれも度が過ぎると誰かにつけこまれる隙に……」
一成の説教が始まりそうな気配を察し、そそくさと教室から出た。
何か今日は朝から逃げてばっかな気がする。ああ、我が家でぐうたらしているであろう王様の姿が頭に浮かぶ……。

弓道場への入り口には、我が家の最強生物2が……間桐桜が立っていた。
その紫色の髪にはいつものように昔、遠坂が渡したという髪留めが着いている。
それは二人の姉妹の証であり、桜と遠坂の、姉妹としての絆の象徴でもある。
顔を伏せて立っていた桜はオレの足音に気づくと、さっと顔をこちらに向けた。
「先輩!?」
「よう桜。待っててくれたのか?」
「あ、はい。ちょうど休憩だったから」
桜は顔をほんのり赤らめながら恥ずかしそうに目を泳がせた。
「それじゃあ道場へ戻りましょうか。部長」
少し茶目っけを出してそう声をかけたオレに、「そうですね。今日はよろしくお願いします、先輩」
その言葉でスイッチが入ったのか、桜は弓道部部長の顔に変わり、凛々しく答えた。

そう、今の弓道部の部長はもう綾子じゃない。
もう部自体は引退した綾子にとって、新入部員相手に熱弁を奮うことはあくまで趣味の一環にすぎない。なんだかあいつって、将来は仕事人間になりそうだな。
「どうかしましたか?」
ボーっとしていたオレに桜が心配したのか声をかけた。
「いや、何でも無い。ちょっと考え事」
さすがにどこぞの部活マニアの行く末を案じていたとは答えられず、適当な返事をする。
桜は首を傾げて不思議な顔をするが、にっこりと笑って、オレの手を引いてきた。
自分の顔が熱くなるのを感じて、恥ずかしさがこみ上げる。同時に、前よりも積極的になった桜に、嬉しいのかいじらしいのか、よくわからない感情がこみ上げた。

「いやー衛宮がいてくれると助かるよ!主に雑用全般で!」
まぁぶっちゃけこんなもんだ。やることなんて。
もしかしてオレが新入部員の指導をするとでも?というかできるとでも?
無理です。普通に無理です
一年で弓道をやめてしまったオレに、人に教えるなんて不可能だ。オレにできるのは痛んだ弓の修理やちょっとした掃除くらい。
「いやー士郎ってば助かるー♪正に正義の味方!」
虎よ。それ以上咆えないでくれ。頼むから。相変わらずの能天気バリバリな藤ねぇの声に呆れながら、ちらりと射場を盗み見た。
さすがに綾子や桜にしごかれまくった部員たちだ、その腕は確かな物で、恐らく県でも屈指の強豪と呼べる腕前ばかり。

もう一人ワカメの人も部員達をしごいていたが、あれは何一つ得をしないしごきだったからな。
簡潔に言うと後輩イジメだ。
「衛宮もさ、ちょっと撃ってみる?」
射場を見るオレに気づいたのか、綾子がいつもの質問をしてくるが、それをオレはいつもの言葉で返した。
「言ってるだろ?他の部員の弓なんて恐れ多くて使えない。撃ちたいと思ったら自分の
 弓を持ってくるよ」
そんないつも通りの返答に、綾子は「そっか」、と短く返事をする。
また弓の手入れに戻り作業続けていると、オレンジの色の光が道場に差し込んでいるのが見えた。もうそろそろ夕方かと気づく。
「悪い、オレちょっと夕飯の支度があるから先帰るな」
とりあえず一言声をかけて道場を出ようとすると、「あ、私も……」という声が射場からした。
見ると、桜がそそくさと帰り支度を始めようとしていた。
「いいよ。桜は大会も近いんだし、それに部長って立場があるんだ。途中で帰っちゃだめだろ」
「でも……」
「いいから。その代わり大会終ったら桜の美味い飯、たらふく食わせてくれよな。桜の飯がないとセイバーも発狂するし、そこのバカ虎も」
「バカ虎って何よ!藤村先生でしょ藤村先生!」
「悪い悪い。んじゃお先―」
「んー。また今度もよろしくなー衛宮」
そんな短いやりとりをした後、オレは道場を後にした。
空を見上げれば、真っ赤な夕日。それは町をオレンジ色に染め上げ、一日が後半へと入ったことを克明にしてた。

一通りの晩飯の買い物を済ませ、オレは新都の商店街を歩いていた。ほんのりと香る商店街独特の臭いが、ついつい買い物をする手を軽快にした。
「ちょい買いすぎたか。まー家には良く食うのがいるからな」
そんなことを呟きながら、商店街を抜けて大通りへと出ると、ふいに以外なものが目に入った。
「うん?あれは、バゼット?」
50mほど先に、良く見知った男装の女性がいた。少し前に我が家の居候であった女性だ。
「何とか仕事が見つかりました!いつまでもここにいるわけにもいきませんし、近々ここを出ようかと思います」

そんなちょっぴり「出ようかと思いますって、ここは貸し部屋じゃないぞ」などと思うセリフを吐いた翌日には出て行った女性だ。
行動が早いというか、猪突猛進というか、いや、深く考えるのはやめよう。
とにかくその女性が今、すぐ先にいた。
しかも、酷く疲れた様子で。というか精根尽き果てた様子で。
「あー……バゼット?」
少しためらったが、ここで話しかけないわけにもいかない
「んぁ、う、う?」
少し頭がイッちゃってるような返事を返した後。
「あ……は!士郎!?どうも、お久しぶりですね」
いつものバゼットに戻った。
「その節はお世話になりました。なんとお礼を言えばいいやら」
「そういうお礼はもっと早く言おうね」という思いも、この礼儀正しい態度の前では霞んでしまう。こういう馬鹿に律儀な人は憎めない。というか好きなタイプだ。
「なんか疲れてるみたいだけど。今、どんな仕事してるの?」
「はい、実は派遣社員を」
ああ。なるほど。うんうん。非常に納得した。
この馬鹿正直なバゼットのことだ。どっかのくそえらい仕事場に飛ばされて、そこで
もやっぱり律儀にキッチリ仕事をこなしているんだろう。それでこれか。
なんか泣けてきたな。
「バゼットさ、今日オレん家で晩飯食うか?」
何気なくそう聞いた瞬間、バゼットの顔がオモチャを目の前にした子犬のような顔になった。
「い、いいんですか?いや実はここ一週間カップメン以外の物を口にしてなくて」
やめてくれ。マジで涙が出てくる
そんなこんなで今日はバゼットといっしょに我が家がある住宅街へとバスで帰ることに。
たまにはお客さんもいいな。セイバーと藤ねぇは取り分が減るとか言いそうだけど。
バスに揺られて数10分、目的地である住宅街のバス停に着いた。
日はすでに沈みかけていて、もうすぐ夜がやってくるんだと教えていた。その中をオレとバゼットは買い物袋をぶら下げながら歩く。
「バゼットも結構大変なんだなぁ」
「そんなことありませんよ。きっと士郎達の方がずっと大変です」
「いや、オレは口からエクトプラズマ出したりしないし……」
薄暗くなってきた住宅街を、二人で話しながら歩く。家には、あと数百mほどの距離だ。

「もうすぐ着きますね。私はこんな風に人と世間話をするのは久しぶりですから、あっという間に着いた感じです」
「オレもだよ、やっぱ誰かと帰るってのはいい」

────しかし、領地は遠ざかる―――――
────────双眸は光り暗闇を刺す――――――

「うく、あ……」
呼吸が、止まった。

────覚悟いいかと彼女は呟き、蛇の如き指先はうねる――――――

「これ…は…」
バゼットもまた、苦しがっている。
バス停から歩いてきて、家との距離が100mほどになった瞬間だった。

―――――ああ、今は夜。魔法使いは箒に跨り――――――

「これは……結界……?」
以前、ライダーの結界に出くわした時の感覚が、脳髄を埋め尽くしていく。
しかし、あの時よりもずっと鋭く、収束するように思えた。
「こんばんは」
見た先に、誰かがいた。
「こんばんは、衛宮士郎君」

その女性は立っていた。そしてオレにあいさつをした。ただ、それだけ。
バゼットは苦しいのか震える眼でその女性を見て、蒼白の顔で固まった。
「蒼崎……」
バゼットは震えながら、驚愕を瞳に映す。
「ちょっと余計な人がいるけど・・・魔術師かな?」
女性はこの状況下に最高に似つかわしくない声で言う。
「まーいっか。それじゃま・・・」
女性はかけていた眼鏡に指を掛ける。
「いっちょやりますか」
そうして、彼女は自分のスイッチを、切り替えた。
「橙子……」
遅れてバゼットが呟いたその瞬間に、オレは自身の撃鉄を体へと打ち下ろしていた。
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Comment

面白かったです。
- | 2008年12月11日(木) 18:38 | URL | コメント編集

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